名刺・封筒などのオフィス向け紙製品を中心に約3500点を掲載した山櫻の公式オンラインショップ

ある意味生きものという紙の話


「紙は生きもの」なんて言葉を聞いたことありませんか?

確かに生きものと同じように、紙には「目」があったり、「腰」があったり、
「耳」や、顔の意を表す「面」という言葉も使います。
さらに紙が「息をする」とか、紙を「寝かす」といった表現も使われます。

でも人間や動物のように動いたり、成長したりといった命があるわけではありません。
紙が環境によって変化したりする様子を例えて、「紙は生きもの」と言うことがあるのです。

紙の「目」


ここでいう紙の「」は、ものを見るための「目」ではなく、筋状の模様や凹凸などの性質や傾向を表す「目」を表します。紙の「目」とは、紙を漉くときに生じる紙の繊維の流れの方向、つまり「流れ目」のことをいいます。

では、紙の「目」はどうしてできるのでしょうか?紙は製造される時に原料の繊維がワイヤー上で脱水されながら、高速で進んでいきます。そのときに進行方向へ引っ張られた繊維は同じ方向に並びます。その繊維が一定方向に並んでいる方向のことを『紙の目(流れ目)』というのです。

流れ目には、縦目横目がありますが、それは巻き取りから断裁する際の切り方によって変わってきます。紙は目に対して平行に折り曲げやすく、きれいに裂きやすい性質をもっています。紙を扱ううえで、紙の「目」を意識することはとても重要なのです。

紙の「腰」


よく麺類などで「コシがある」と表現することがありますが、紙の場合も、「コシがある」や「コシがない」というような表現をします。

もちろん人間の「腰」ということではなく、「弾力やねばり」などの意味で使われています。つまり紙の「腰(コシ)」は、紙を曲げたときの力や抵抗性などを表しているのです。

挨拶状で使用するカードや、表紙に使われる紙は、適切な"腰(コシ)"を持っていることが必要ですね。

紙の「耳」と「面」


紙の「耳」とは、製紙工程で抄紙機上のものや、巻き取った長いままの紙のことを紙匹(しひつ)といいますが、その紙匹の両端を断裁し取り除く部分のことを「耳」といいます。実際には、「紙の耳を落とす」とか「紙に耳を付ける」などの使われ方をします。和紙製品で「耳付き」と目にすることがあると思いますが、紙を漉いたときにつくフリルのような部分のことを言います。
通常は「耳」の部分を断ち落として規格サイズにするのですが、高級な和紙名刺などは逆にこの「耳」が付いている方が、手作り感があって高級な証とされています。

紙の「面」は、顔の意を表す「面」が使われており、「紙面」のように紙の表面を表しています。

紙が「息をする」


紙が「息をする」とは、どういうことでしょうか。
紙は植物繊維を主原料として造られています。そして植物繊維自体が水分と温度を持っているので、紙も水分と温度を持つことになります。そして繊維自体が水分となじみやすい性質があるため、紙も水分の影響を大きく受けます。紙は水分(湿度や湿気)を吸収すると紙の繊維が伸び、逆に水分を放出すると紙の繊維は縮みます。
みなさんは紙を水で濡らしたときに、紙が丸まってしまうという経験はありませんか?これは水分によって紙の表面が伸びたために、裏側を内側にカールしてしまうのです。つまり紙は、空気中の湿度レベルに応じて水分を吸ったり、吐いたりして、バランスを保とうとしています。バランスが崩れると、紙が伸びたり、縮んだりして印刷をするときにトラブルの原因となります。

このように紙が水分を吸ったり、吐いたりして水分の出入りをしている様子を「息をしている」とか「生きている」と表現しているのです。

紙を「寝かす」


紙は生きもののように、絶えず「息(呼吸)」をしているわけですが、紙の置かれている環境によって「呼吸」の程度には差があります。

以前は、「紙」と「大気」が保有する水分格差が大きく、紙ぐせなどのトラブルが多発していました。そのため造りたての紙は使いづらいといわれていました。そういったトラブルを防ぐために造りたての紙をすぐに使わず、「寝かす」ことで、しばらく保管し、「調湿」を行っていました。紙をある期間以上「寝かす」と、紙は環境になじみ、紙ぐせなどが安定した状態になります。これを「熟成(エージング)効果」または「紙慣らし」といいます。

ふだん何気なく使っている紙ですが、
このように「生きもの」と同じ表現を使うことで、なんだか親しみがわいてきますね。

紙が生まれて、製品として使われるまでにはたくさんの人が関わり、
そしてより使いやすくなるように、様々な工夫がなされています。

限られた資源の中で、紙という生きものを大切に使っていきたいですね。