手紙のススメ vol.6 美文字よりも丁寧な文字
株式会社山櫻のセカンドブランド +lab(プラスラボ)のクリエイティブディレクター 大場敦子さんによる連載企画「WATASHINO的 手紙のススメ」では、手紙もひとつのコミュニケーションツールでありビジネスツールであると考え、“「ワタシ」を印象付ける”をキーワードに手書きの手紙にまつわるコラムをお届けします。
美文字よりも丁寧な文字
手紙を書くことが苦手だと思われている方の多くに、手書きの文字に自信がないからという方がいらっしゃいます。自分以外の誰かに読まれることが前提となると、自分の文字がきれいかそうでないかは気になります。
しかし、美しい文字と読みやすい文字はイコールなのでしょうか?
いえ、必ずしもそうとは言えません。美しく崩された行書の文字をスラスラと読むことができますか?それよりも多少不格好でも丁寧に楷書で書かれた文字の方が、恐らく読みやすいのではないでしょか。
ここでのポイントは、相手があることを前提として書かれているかどうか、ということです。
手紙は美文字を披露するものでも、書道の展覧会でもありません。伝えたいことや、伝えたい気持ちを書くもので、できれば、より正確に伝わって欲しい。それには、相手を思って、丁寧に心をこめて手紙をしたためることが必要です。
これならば、誰でも今すぐにできますね。
美文字も美しい文章も、書くことができるようになるには努力が必要です。そして、それは長い道のり…。長い道のりを頑張って進むのも大切なことですが、まずは、できることから一歩踏み出すことも大切です。
細字よりも太字
手書きの文字については、もうひとつすぐにできることがあります。それは、道具の力を借りること、筆記具を選ぶことです。
手書きに自信が持てない方ほど、自信のなさからか細字のペンを使って小さな文字を書く傾向が見受けられます。小さな文字は、それだけで読みにくくなる場合があり、オドオドした印象を与えてしまいます。
おススメの道具は、太字のペン。
太字の万年筆と1oのゲルインクのボールペンが、私のおススメです。
最近では、万年筆も数百円と安価なものが販売されていて、しかも書きやすくて優秀なものばかりです。万年筆のインクは、普通に書くだけで色の濃淡ができ文字になんとなく情緒がうまれる気がします。一方ゲルインクのペンは、万年筆よりも紙を選ばない上に、1本150円程度で買えますから日常づかいに重宝します。
太字のペンのいいところは、画数の多い漢字などが書きにくくなるため自然と大きな文字を書くようになります。文字が大きくなることで老若男女様々な方の読みやすさにつながり、元気でイキイキとした印象を与えます。
手書きの文字に自信が持てずにいる方は「美文字よりも丁寧な文字」「細字よりも太字」を試してみてください。
……ご自分が考えているほど、手紙を受けとった相手は文字の形は気にしていません。むしろ“手書きの手紙”というところに感動したり、うれしくなったりして印象に残るものですよ。
WRITER
大場 敦子 Atsuko Oba
+lab(プラスラボ(R)) クリエイティブディレクター
デザイン、印刷関連、雑貨店などの仕事を経て、株式会社山櫻で文具のブランド「+lab」のクリエイティブディレクターを務める。
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